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【特集】チェコ文学のすすめ 選書:阿部賢一さん

阿部賢一さんをゲストにお迎えしたトークイベントの際に配布した小冊子『森のなか 特別号』の内容をWEB上で公開いたします。

◆チェコ(ボヘミア)文学◆

『約束』(河出書房新社)
イジー・クラトフヴィル:著
阿部賢一:翻訳

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【内容紹介】
ナチの命で鉤十字型邸宅を建て、戦後、秘密警察に追われる建築家。妹を失い、犯人を監禁する地下街を造る。衝撃のチェコ・ノワール!

【阿部賢一さんコメント】
「そう、暗い傷のことから始めよう」という主人公の声に導かれるように、建築家の暗い過去、そして都市ブルノの暗い歴史が次々と披露される。そこに広がっていたのは、あまりにもグロテスクで、あまりにもブラックな世界だった。ちなみに、ブルノの中心部で巨大な地下納骨堂が発見されたことが本作執筆の契機になっている模様。


『もうひとつの街』(河出書房新社)
ミハル・アイヴァス:著
阿部賢一:翻訳

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【内容紹介】
見知らぬ文字で書かれた本を発見した「私」が、入り込んだ「もうひとつの街」には異界が広がっていた。世界が注目するチェコ作家がおくる、シュールな幻想とSF的想像力に満ちた大傑作。

【阿部賢一さんコメント】
誰しも一度は、「一枚壁を隔てた向こう側では、私たちとは別の世界が広がっているかもしれない」と思ったことがあるはず。主人公の「私」は、そんな予感に身をゆだね、プラハに潜む幻想的な世界の扉を探し求めていく。


『黄金時代』(河出書房新社)
ミハル アイヴァス:著
阿部賢一:翻訳

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【内容紹介】
虚構の島をめぐる蠱惑の旅行記、始まりも終わりもない増殖する“本”、連鎖する世界を解き放つ記憶の幻影―物語の極限を比類なき想像力と文学的技法で描く、現代チェコ文学が生んだ異形の大作!

【阿部賢一さんコメント】
他文明から隔絶した孤島の唯一の文化は、一冊の「本」。それは、ウィキペディアのように誰もが加筆・修正できる、無限に増大していく書物だった。ハザール王国の末裔ミハル・アイヴァスの想像力が最大に発揮された作品。


『エウロペアナ:二〇世紀史概説』〈エクス・リブリス〉(白水社)
パトリク オウジェドニーク :著
阿部 賢一 ・ 篠原 琢:翻訳

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【内容紹介】
現代チェコ文学を牽引する作家が20世紀ヨーロッパ史を大胆に記述。笑いと皮肉のなかで、20世紀という時代の不条理が巧みに表出される。20以上の言語に翻訳された話題作、待望の邦訳。

【阿部賢一さんコメント】
「ナチス」、「共産主義」、それに「マスタード」、「ブラジャー」といったエピソードの連続。「数字」、「事実」、「噂」、「ステレオタイプ」があくまでも境界線なく並列されていく。「世界史」の教科書がこういう記述だったら、きっと歴史好きも増えたはず? いや、「現代文」の教科書としてもありか?


『わたしは英国王に給仕した』(池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)(河出書房新社)
ボフミル・フラバル :著
阿部 賢一:翻訳

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【内容紹介】
中欧文学巨匠の奇想天外な語りが炸裂する、滑稽でシュールな大傑作。給仕人から百万長者に出世した主人公の波瀾の人生を、ナチス占領から共産主義へと移行するチェコを舞台に描く。

【阿部賢一さんコメント】
給仕の生涯を描きながら中欧の歴史を描く。そう書くと、あまりにも普通だけれども、その生涯は変化と驚き(そしてエロス)にあふれている。フラバルの文学、中欧文学入門として、最適の一冊。(問題:タイトルの『わたし』は誰でしょう? ヒント:主人公ジーチェの『わたし』ではありません。正解は同書の中にあります。)


『剃髪式』(フラバル・コレクション)(松籟社)
ボフミル・フラバル :著
阿部 賢一:翻訳

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【内容紹介】
ボヘミア地方ヌィンブルクのビール醸造所を舞台に、建国間もないチェコスロヴァキアの「新しい」生活を、一読したら忘れられない魅力的な登場人物たちに託していきいきと描き出す。「ビール醸造所で育った」作家が書き上げた、ビールが飲みたくなる小説。

【阿部賢一さんコメント】
茶目っ気のある人がいて、実直な人がいて、それにずっとしゃべりっぱなしのあの人もいる。時代が変われば、生活も、人も変わる。けれども、あのビール醸造所に行けば、かれらに会える。そんな気持ちにさせてくれる一冊。


『火葬人』(東欧の想像力)(松籟社)
ラジスラフ・フクス :著
阿部 賢一:翻訳

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【内容紹介】
1930年代末、ナチスドイツの影が迫るプラハ。葬儀場に勤める火葬人コップフルキングルは、愛する妻と娘、息子に囲まれ、平穏な日々を送っているが……。

【阿部賢一さんコメント】
ホロコーストを題材にした書物は数多くあるが、ここまで不気味かつ滑稽な人物(加害者)を描いた小説は、本作をおいて、他にはないかもしれない。恐怖と笑いが表裏一体となる稀有なる作品。


『夜な夜な天使は舞い降りる』 (はじめて出逢う世界のおはなし チェコ編)(東宣出版)
パヴェル ブリッチ:著
阿部 賢一:翻訳

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【内容紹介】
プラハのとある教会に集った守護天使たち。ワイン片手に、自らが見守っている人間たちの話を繰り広げる。国を超え、時も越えて、夜な夜な続く天使たちのおしゃべり。

【阿部賢一さんコメント】
天使もふつうの人間並みに大変! だって、見守る人間の無茶ぶりと言ったら…――うまくいかない、どうしようもならない、そんなとき、ふと、自分にもこういう守護天使がそばにいるかもしれない、そう思うだけで、どこかほっとさせてくれる天使たちの物語。


『ロボット』(岩波書店)
カレル・チャペック :著
千野 栄一:翻訳

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【内容紹介】
舞台は人造人間の製造販売を一手にまかなっている工場。人間の労働を肩代わりしていたロボットたちが団結して反乱を起こし,人類抹殺を開始する……「ロボット」という言葉を生み出した戯曲。

【阿部賢一さんコメント】
《ロボットの反乱におびえる人間》というプロットを初めて用いた小説。ほかにも、労働の問題(ロボットが仕事したら、人間の仕事はどうなる?)、AIの問題(ロボットには感情があるの?)など、今の私たちが抱く疑問が数多く埋められている古典中の古典。


『存在の耐えられない軽さ』(集英社)
ミラン・クンデラ:著
千野栄一:翻訳

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【内容紹介】
「プラハの春」とその凋落の時代を背景に、ドン・ファンで優秀な外科医トマーシュと田舎娘テレザ、奔放な画家サビナが辿る、愛の悲劇―

【阿部賢一さんコメント】
何といっても、タイトルが秀逸。そして、頁をひらくと、《小説》という固定概念をひっくり返してくれる驚きの数々。映画化された作品を見たクンデラは激怒し、自作の映画化を一切認めなくなった。そう、小説にしか表現できないものがここには詰まっている。


『厳重に監視された列車』〈フラバル・コレクション〉(松籟社)
ボフミル・フラバル:著
飯島周:翻訳

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【内容紹介】
舞台は1945年、ナチスの保護領下におかれたチェコ。若き鉄道員ミロシュは、ある失敗を苦にして自殺を図るが未遂に終わり、命をとりとめた後もなお、そのことに悩み続けている……イジー・メンツェル監督による同名映画の原作小説。

【阿部賢一さんコメント】
とある小さな駅の見習いとして働いているミロシュ。毎日々々、行き交う列車を見送るばかり。そう、ミロシュにとっての列車は、しずかに見守るもの。でも、あるとき、そんな彼が列車に乗る。それは、かれが、日常という壁を打ち破る瞬間だった……。


『時の止まった小さな町』〈フラバル・コレクション〉(松籟社)
ボフミル・フラバル:著
平野清美:翻訳

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【内容紹介】
『剃髪式』の舞台となった小さな町とビール醸造所にも時が流れる。戦争がはじまって終わり、新しいかたちの国ができ、この小さな町も、新しい時代に入っていく。しかしそこには、新しい時代では生きていけない人々も、また……

【阿部賢一さんコメント】
自分たちだけでは抗えない大きな流れに呑み込まれるとき、人は何を考え、何をするのだろう。心に見えない傷を負いながら、それでも、生きていく人たちの物語。『剃髪式』と合わせて読みたい作品。


『第三の魔弾』(白水社)
レオ・ペルッツ:著
前川道介:翻訳

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【内容紹介】
16世紀のアステカ王国、コルテス率いる侵略軍に三発の弾丸で立ち向かう暴れ伯グルムバッハ。その運命は? プラハ生まれのユダヤ系作家による、幻想歴史小説。

【阿部賢一さんコメント】
手に汗握る物語を書かせたら、ペルッツはプラハの作家の中で随一。かのレオ・フレミングも敬愛した稀代のストーリー・テラー。ルドルフⅡ世の時代の幻想的なプラハの世界に浸りたい方は、『夜毎に石の橋の下で』もあり。


『裏面 ある幻想的な物語』(白水社)
アルフレート・クビーン:著
吉村博次・土肥美夫:翻訳

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【内容紹介】
巨大富豪パテラが中央アジアに建設した〈夢の国〉に招かれた画家夫妻は、奇妙な都に住む奇妙な人々と出会う。やがて次々に街を襲う恐るべき災厄とグロテスクな終末の地獄図。

【阿部賢一さんコメント】
〈青い騎士〉の画家としても知られるクビーンが残した唯一の長篇小説。幻想的で夢想的な世界は彼の絵画にも共通するものがある。それにしても、本作にしても、アイヴァス『もうひとつの街』にしても、幻想の強度の源泉はどこにあるのだろう?


『カフカ ポケットマスターピース 01』(集英社)
多和田葉子:編

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【内容紹介】
カフカの面白さを1冊に凝縮。新訳『変身(かわりみ)』を筆頭に、短編『お父さんは心配なんだよ』長編『訴訟』など、さらには彼の遺した書簡集や公文書も加え、その魅力を現代に伝える。

【阿部賢一さんコメント】
多和田葉子の「変身(かわりみ」、川島隆の「訴訟」などの新訳により、はるかに解像度が上がった翻訳。サラリーマンとしての文書を収録した「公文書選」は、「人間」カフカの日常を浮かび上がらせてくれる。


『迷宮1000』(東京創元社)
ヤン・ヴァイス:著
深見弾:翻訳

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【内容紹介】
「おれはだれだ?」記憶を失って目覚めた場所は、天高く雲をついて聳えたつ巨大な舘。全世界を睥睨せんがごときこの舘の主の名はオヒスファー・ミューラー。こいつは神か、あるいは悪魔か。捜し求めるは失踪したタマーラ姫。1000もの階層からなる超巨大建築を彷徨ううちに、“探偵”たるおれは、冒険家の集う町や他星系へ渡る人々の待合室、そして地獄に至る道を見出すが……。

【阿部賢一さんコメント】
チャペックと並ぶチェコSFの巨匠による代表作。ちなみに、『たべるのがおそい』(2号)には、ヴァイスの短編「遅れる鏡」(拙訳)が収録されています。


◆中東欧文学◆

『東欧の想像力 現代東欧文学ガイド』(松籟社)

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【内容紹介】
各国・地域別に、近現代文学の流れを文学史/概説パートによって概観するとともに、重要作家を個別に紹介。越境する東欧文学・東欧をルーツとする文学も紹介し、より広い視野で、東欧の文学を捉えるガイドブック。

【阿部賢一さんコメント】
「東欧」「中欧」「中東欧」、いろいろな名称で呼ばれるエリアですが、その文学もまた多種多様な面々が揃っています。気になるトピックを徹底的に読むもよし、偶然にまかせてページを開いて見るもよし。あなたを待っている作家、作品がまだまだいます。


『昼の家、夜の家』〈エクス・リブリス〉(白水社)
オルガ・トカルチュク:著
小椋彩:翻訳

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【内容紹介】
チェコとの国境地帯にある小さな町ノヴァ・ルダ。そこに移り住んだ語り手の紡ぐ夢、記憶、逸話、伝説……国境の揺れ動いてきた土地の記憶を伝える、新世代のポーランド人作家による傑作長編。

【阿部賢一さんコメント】
一言でいえば、「キノコ文学」。人為的な境界など気にせず、どこでも繁殖するキノコのような生命のしなかやさが、レシピ、伝説、追憶など、さまざまな断章によって語られる。続く『逃亡派』もおススメ!


『ソラリス』(早川書房)
スタニスワフ・レム:著
沼野充義:翻訳

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【内容紹介】
惑星ソラリス――この静謐なる星は意思を持った海に表面を覆われていた。惑星の謎の解明のため、ステーションに派遣された心理学者ケルヴィンは変わり果てた研究員たちを目にする。彼らにいったい何が?

【阿部賢一さんコメント】
エイリアン、宇宙人など、奇異な地球外生物を想像力豊かに描く作家があまたいる一方で、レムが描く宇宙の世界は、人智を越えた「無形」なるもの。他者を図式的に描こうとしないレムの世界は今なお刺激を与えてくれる。


『北は山、南は湖、西は道、東は川』(松籟社)
クラスナホルカイ・ラースロー:著
早稲田みか:翻訳

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【内容紹介】
京都の町を走る京阪電車の扉が静かに閉まる。無人の駅にひとり降りたった美しい若者こそ、かの光源氏の孫君。彼の探し求めるものは、いったい何なのか……現代ハンガリーを代表する作家が半年間の日本滞在を契機に書き下ろした幻想小説。

【阿部賢一さんコメント】
異国の地の都市を描くとき、そこには、つねにエキゾチックな眼差しが潜んでいる。クラスナホルカイはそれを意識しながら、その世界を「新奇な形」で描く努力を惜しまない。その結果、生みだされたのは、きわめて奥深い世界観に裏打ちされた、新しい「京都」だった。


『若き日の哀しみ』(東京創元社)
ダニロ・キシュ:著
山崎佳代子:翻訳

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【内容紹介】
ユダヤ人の父を強制収容所に送られた著者による、アイロニーと叙情に彩られた、この上なく美しい自伝的連作短編集。犬と哀しい別れをする少年はあなた自身でもあるのです。

【阿部賢一さんコメント】
「秋になって、風が吹きはじめると、マロニエの葉がまっさかさまに、柄を下にして落ちてくる」という一節から、少年の切ない世界が始まる。それはあまりにも抒情性に満ちているので、著者の家族をめぐる強制収容所の過去を却って想起させるものだ。


『夢宮殿』(東京創元社)
イスマイル・カダレ:著
村上光彦:翻訳

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【内容紹介】名門出の青年が職を得たのは、〈夢宮殿〉。迷宮のような建物の中には、選別室、解釈室、筆生室、監禁室などが扉を閉ざして並んでいた。ノーベル文学賞候補作家による幻想と寓意に満ちた傑作。

【阿部賢一さんコメント】
管理される「夢」、見ることを許されない「夢」、でも、見てしまう「夢」がある。たしかに、その世界は、バルカンの風景を想起させる。けれども、原題が「夢宮殿の職員」であるように、組織に生きるすべての人に共通する物語でもある。


『三十歳』(岩波書店)
インゲボルク・バッハマン:著
松永美穂:翻訳

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【内容紹介】
「わたしはまだ存在すらしていない。わたしは自分が誰なのか決定したい」――戦後オーストリアを代表する作家バッハマンが、新たな言葉の可能性に挑んだ短篇集。「三十歳」という局面を契機に、きわめて密度の高い言葉が織る七つの作品で、人生のあらゆる境界をめぐって論理と抒情が切り結び、融け合う。

【阿部賢一さんコメント】
ある主人公は日記に記している。「新しい言葉がなければ、新しい世界もない」と。そう、見慣れた風景や心象を鋭利な言葉で綴るバッハマンの世界は、新しくもあり、痛切でもある。


『ある子供』(松籟社)
トーマス・ベルンハルト:著
今井敦:翻訳

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【内容紹介】
没後四半世紀を経ても多くの読者を魅了する恐るべき作家ベルンハルト、その全作品をとく鍵と言われる〈自伝〉五部作のひとつ。母親、祖父母とともに暮らし、貧しい生活の中で、無名の作家であった祖父から決定的な感化をうけた少年時代をふりかえる。

【阿部賢一さんコメント】
初めて自転車に乗ることができたその日、8歳の少年はあることを思いつく。叔母を訪問して、驚かしてみようと。でも、数十キロ離れたその町にはたどりつくことなど叶う夢ではなかった……。様々な言動で話題を呼んだ作家が見た自身の原風景。


『牛乳屋テヴィエ』(岩波書店)
ショレム・アレイヘム:著
西成彦:翻訳

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【内容紹介】
ユダヤの伝統と信仰を墨守してつましく暮らす牛乳屋のテヴィエ。だが彼の娘たちは旧弊な考え方の父に逆らい、異教徒や革命家の青年などと結婚し、次々と親元を離れてゆく。『屋根の上のバイオリン弾き』の原作にして、イディッシュ文学の金字塔。

【阿部賢一さんコメント】
話し出したら止まらない話がある。よくわからないユダヤの風習もある。けれども、どこか憎めない、なぜか気になってしまう人たちがここにはいる。


『ブリキの太鼓』〈池澤夏樹=個人編集 世界文学全集〉(河出書房新社)
ギュンター・グラス:著
池内紀:翻訳

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【内容紹介】
3歳で成長をやめたオスカルは、ブリキの太鼓で身を守り、金切り声でガラスを砕く。ナチス勃興期のダンツィヒを中心に、物語は猛々しくおぞましく滑稽に加速してゆく。ノーベル賞作家の代表作、新訳決定版。

【阿部賢一さんコメント】
大人にならない少年の物語、でも、少年の目だからこそ見えるものもある。例えば、戦争とか。例えば、「大人」の欺瞞とか。例えば、「常識」の脆さとか。非=教養小説の精髄は本書にある!


『悪童日記』(早川書房)
アゴタ・クリストフ:著
堀茂樹:翻訳

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【内容紹介】
戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。その日から、ぼくらの過酷な日々が始まる。人間の醜さや哀しさ、世の不条理を、ぼくらは克明に日記にしるす。ハンガリー生まれの女性亡命作家の衝撃作。

【阿部賢一さんコメント】
主人公は純粋で幼い双子の少年。でもかれらが発するのは、私たちの心を抉り、揺さぶる鋭く、激しい言葉。その小説を、クリストフは、母語ではないフランス語で執筆した。


『ハザール事典 男性版』・『ハザール事典 女性版』(東京創元社)
ミロラド・パヴィチ:著
工藤幸雄:翻訳

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【内容紹介】
歴史上実在し、後に姿を消した謎の民族ハザールに関する事典の形をした奇想小説。(男性版)と(女性版)があり、違いはわずか17行、色違いのカバーです。

【阿部賢一さんコメント】
一度目はページ順に、二度目は項目毎に、三度目は偶然にまかせて読み進めても、まだ謎は残っているはず。ねじれていく物語、迷宮のような小説が好きな方は必読の書。


『ディブック/ブルグント公女イヴォナ ポーランド文学古典叢書』(未知谷)
S・アン・スキ/ヴィトルト・ゴンブローヴィチ:著
西成彦:編/赤尾光春・関口時正:翻訳

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【内容紹介】
世界の戯曲中、最も有名なユダヤ演劇作品『ディブック』、全世界で毎年欠かさず上演される人気作『ブルグント公女イヴォナ』――世界文学史上極めて重要なポーランド戯曲二作品を一冊で。

【阿部賢一さんコメント】
新婦に取り憑いた魂(ディブック)、醜さとは何かを問いかける娘(イヴォナ)という内容も世界観も異なる二品の戯曲。だが両作品ともに、上演される様子を読者に強く想起させる。前者は「女性に取り憑く魂」の姿を、後者は「醜い公女」の姿を。


『動きの悪魔』(国書刊行会)
ステファン・グラビンスキ:著
芝田文乃:翻訳

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【内容紹介】
〈向こう〉には物理的な目には見えない、人間の貧弱な脳にはわからない新たな世界があると、いつも信じていた――「ポーランドのポー」「ポーランドのラヴクラフト」の異名をとる、ポーランド随一の恐怖小説作家が描く、幻視と奇想に満ちた鉄道怪談集。鋼鉄の蒸気機関車が有機的生命を得て疾駆する、本邦初訳14の短篇小説。

【阿部賢一さんコメント】
幻想小説はあまたあれど、鉄道を題材にした幻想短篇集はきわめて稀。そんな作品が1919年のポーランドで刊行された。続く『狂気の巡礼』にも注目。